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2月18日 あと、10日か

唐突に、子供を育てるという事は、人間として最も重要な事の一つであると思った。
なんでそのような事を確信したのかは判らないが、未だかつて無く強く確信した。

最後の一月が始まって、嵐の様に日々が過ぎて行く。
気がつけば、もうあと10日しかない。なんと言う事だ。
まだ、やらなければならない事は残っている。
正直言って全部終わらせる事は無理な気がして来た。
少なくともトイレだけはキッチリと作る。

朝9時半、ママ氏と共にシッディベリヤへ。トイレの工事が始まっている。
トイレの土台をブロックで組み、タンク用の深い穴を掘っている。
予定地が南へズレた。先日の土地の争いの結果だ。少し土地が狭くなった気がする。土地に比例して、若干トイレも小さくなったか?
元々の予定地に土台だけが残されているが、なんとなくこっちのが大きい気がする。
女子トイレ、男子トイレ、小便器の三つの部屋を設ける訳だが、例えば俺が入るには少し小さい気もする。
少なくとも街を見回した限り、俺より幅のあるインド人は存在しないようなので、大丈夫だとは思うけれど。
現場の写真を何枚か撮った。ここにアップするので見てもらいたい。できれば毎日の進行状況をここに画像として記録したい。

現場を見た後、工事の責任者や協力者に挨拶に行く。
先頭に立って協力を取りまとめ設置を押し進めたビジョイ・ハンラー氏は、大学教育を修了後農民になった変わり種だ。
彼以外の協力者はみなどうも脂ぎった印象を受ける。展開次第ではころり、と掌を返されそうで少し怖い。そこに住む人たちがそう選択するのなら、俺は素直にそれに従うのだけれど。ただ、彼らはあくまで有力者だ。トイレを必要とする人々そのものでは無いかもしれない。

挨拶が終わってオフィスに戻ろうとすると、後ろから村人が追いかけてくる。
現場で喧嘩が起こっているらしい。なんだそりゃ。とりあえず現場に向う。
現場に着くと、人だかりの中で二人のインド人が言い合いをしている。殴り合いはしていないが、危険な状態だ。周囲の人々も言い合いに参加し始め、徐々に混乱が大きくなって行く。
ビジョイ氏からの話で、二人はトイレ現場の左右に隣接する土地の持ち主である事が判った。争いの焦点はなんとトイレのドアの位置であるという。
現在建設中のトイレには三つの入り口が有る。男子トイレ女子トイレ、小便器。彼らは自分の土地の側に入り口を作って欲しくないらしい。
理由を聞くと、自分の土地に店を作りたいから、ドアの分だけ土地が狭くなるのは嫌、とか、どうも要領を得ない。とにかく双方自分の土地側に出入り口を作って欲しくないらしい。以前家の中にトイレを作る事を忌避する風習に出会った事が会ったが、同じような事だろうか。
ところで、彼らは自分の土地自分の土地と主張しているが、厳密には彼らの土地ではない。トイレ現場は公道に面しているが、公道周辺の土地はインド政府PWD(public works departmentとか言うものらしい)所有と言う事が確認出来た。しかし、政府の論理と現場・市場・村落の論理は同じものでは無い、という事に難しさがある。土地関連の争いの焦点は現場にある。PWDは地方市場において正常に機能せず、公道周辺の土地の所有権は言ったもの勝ち、主張したもの勝ちという凄まじい事になっている。だからこそ、土地を杭で囲んだり、と言った力技が現出したりする。
地方行政が役に立たないからこそNGOが必要なのだ、と言う事も出来るがややっこしい。行政はともかく、せめて制度だけでも現場で力を持ちうるレベルで有って欲しいと思うが無茶な話か。
激論一時間、間に入ってなだめすかし、ようやく「両側に扉をつける」という胡乱な結論に落ち着く。なんだそりゃ。この二人は一体結局何を主張したかったんだ。
こういった妙なタイプの争いは、日本語なら3分でカタをつける自信があるが、英語からベンガル語の二重通訳では無茶がある。死ぬ程疲れた。

彼ら二人はその後も現場周辺をうろつき、じっと工事を見つめている。まるで見張られているようだ。いつまた争いが起こるとも知れないので、結局昼飯どきまでずっとそこに残らなければならなかった。(実際に小さい争いが二三回起こった)

オフィスに帰った後、唐突に職員とNGOの内情について話す。
なんだかイヤな話を聞かされた気分になる。こんな内容の話をインド人とする事になるとは、驚きだ。リーダーとの間に不協和音があったりするらしい。
俺に相談されても、困る。
by kakasi0907 | 2005-02-19 00:33


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